歯列矯正のアピールポイント
最近、若者たちを中心に、きれいな歯、健康な歯の価値が認められてきているのは、とても喜ばしいことです。
中高年の方々の間でも、体の変調が起こり得るということが理解されはじめています。
虫歯で痛みがひどくなったら治療に行こう。
削るときは痛いけれど金でも銀でもかぶせてもらえばいいや。
いざとなったら抜いてしまえばいい。
こういった考え方はもう時代遅れといっていいでしょう。
ほうっておけば、噛み合わせがどんどん狂って、アゴの位置までずれてしまい、全身にさまざまな悪影響を与えることは何度もご紹介しました。
一般の医療と同じで、どんな治療よりも予防のほうがたいせつです。
予防の重要性を強調するためもあって、こうなったらもう手遅れ、そんな言い方をすることもあります。
けれど、症状がどこまで進展していても、そこから対処する方法がないわけではありません。
痛みや苦痛や不快をこらえて、歯医者に行くのを後回しにする、それをやめればいいのです。
歯に対する意識を変えるときは今なのです。
もう、歯を後回しにする時代は終わったのです。
何十万年か何百万年かさかのぼった私たちの祖先は、獣と同じ牙を持ち、肉を食らい、木の実を噛み砕いていました。
何千年か経つうちに、人間のアゴは次第に小さくなっていきました。
アゴが小さくなったのなら、歯も小さくなってしかるべきですが、こちらのほうは進化に手間取っているようです。
現代人の歯は、アゴの大きさに対して、いささか大きすぎるきらいがあります。
歯並びが悪い人が多いのは、これが原因です。
アゴに並びきれずに、列を乱してしまうのです。
私たち歯科医が入れ歯をつくるときには、義歯床に植える人工の歯を、患者さんの自前の歯より、少しだけ小さめにしています。
もちろん、噛み合わせに不都合のないように、細心の注意は怠りません。
入れ歯は物を食べ、あるいは喋るための道具というだけではありません。
たいせつな顔の一部として、美的にも満足の行くものであって当然です。
せっかくの第三の歯ですもの、ちょっとだけ進化させてみましょう、ね。
簡便な入れ歯の洗浄剤が市販されています。
コップ一杯分の水溶性の薬剤に、外した入れ歯をつけておくだけで、汚れがすっかりとれてピカピカ、というキャッチフレーズ。
その効果のほどはともかくとして、洗濯物でもつけおき洗いは汚れがよく落ちるといいますから、無用のものではないのでしょう。
ところで、入れ歯の患者さんから、寝るときには外したほうがいいのでしょうか、と質問されることがあります。
たいていの場合、その患者さんは外して寝たいと考えていらっしゃるようです。
その患者さんは、入れ歯にしっくりこないものを感じているのです。
できれば外してしまいたいが、外すと見てくれも悪いし物も食べられない、しかたがないから入れてはいる。
でも、寝るときぐらいは外したいのだが。
本当は反対なのです。
夜、眠っている間にも、口は動かしています。
どんな夢をみているのかムニャムニャいうときには噛む動作です。
ときにはグッと奥歯を噛みしめるようなこともあります。
そんなときに、せっかく入れておいた入れ歯がなければ、噛んだつもりが空振りとなって、歯とアゴの噛み合わせは正常な関係を保てません。
いい入れ歯なら、外さないほうがベターです。
問題は、合わない入れ歯を無理して入れている場合です。
極端な例では入れているだけで歯茎が痛かったりする。
噛み合わせが高すぎて、普通に口を閉じているのも負担に感じるケースもあります。
入れ歯が合っていないために、肩がこったり、首がこったりすることが実に多いのですから。
そんな圧迫感のある入れ歯なら、外して寝たほうがいいでしょう。
特に夜中に歯を食いしばるような癖のある方は、そのほうが無難です。
入れ歯はもともと口の中という湿度100パーセントの環境用につくってあります。
ですから外すのはかまいませんが、そのままほうりっぱなしというのはいけません。
どこの歯医者さんでも注意してくださることですが、コップの水の中に入れておくことです。
冒頭にお話しした、市販の洗浄剤と同じ要領ですね。
歯医者をしておりますと、入れ歯の方でも本当にいろいろな方がいらっしゃいます。
中にはせっかく作った入れ歯を、人前に出るときにしかつけないという方もいます。
総入れ歯ではないので、外しても、喋り、物を食べるのには不自由しないというのです。
人前に出るときだけは、歯が欠けているとみっともないので入れ歯を入れるわけです。
そんなに入れ歯がいやなのは、合わない入れ歯を我慢しているからなのです。
きちんとした入れ歯をつくったほうが、あとあときっとためになると思いますが。
入れ歯を外したがる方、物が噛めればいい、人前で恰好がつけばいい、という考え方です。
残念なことに、歯の重要性など考えたこともないし、ご自分の体の一部という理解もないように見受けられます。
この間、入れたのはいつだったっけ、なんていう方が、久しぶりに入れてみたら、これがもう全然合わなくてびっくり、合わないどころか入れることもできない、と大騒ぎでかけつけていらっしゃることもあります。
長い間、外していたので、入れ歯が変形してしまったのです。
歯茎のほうが変わっている場合もあります。
入れ歯の台は金属部分を除いてプラスチックの樹脂成分ですから、こうして変形する可能性はおおありです。
熱にも弱いので注意が必要です。
極端な寒さもよくありません。
水につけておけばいいといっても、3日も4日もつけっぱなしにしていては、細菌とかアメーバが発生しますから、衛生上もお勧めできません。
口に合った入れ歯をつくり、食後に掃除するときだけは外して少し休ませてあげる、それが入れ歯との上手なつき合い方です。
歯を植え込んである台座の部分、入れ歯の床を工夫したトゥルーティッシュという、新型の入れ歯が開発されたことは、「お酒がおいしく感じられる入れ歯」としてご紹介しました。
どういう仕掛けかもう少し詳しく説明しましょう。
コンピュータでおなじみ、半導体産業のハイテク技術を駆使して、現在では超精密な加工が可能になっています。
髪の毛を薪割りよろしく5つに裂いてしまうなんてことも朝飯前だそうで、細かい細工も、米粒に文字を書くどころか、針の先(先端ですよ、尖っていて、縫い物ができる普通の針ですよ)に名前を刻むなんてことまでできるといいます。
そんなミクロの加工技術の成果で、目にも見えない細かな網の自の、金属製のメッシュを使った床が完成しました。
それがトゥルーティッシュです。
メッシュの三段重ねでも、きわめて薄いために食べ物の温かさ、冷たさがはっきり伝わります。
高性能のトゥルーティッシュですが、使い方が悪ければ宝の持ち腐れになります。
どんな道具でも同じこと、手入れを怠れば性能を発揮できなくなるのです。
トゥルーティッシュを入れた患者さんは、おお、酒の味がわかる、といって非常に喜んでくださいますが、人間、感謝感激は最初のうちだけで、すぐにそんな福音は当然のこと、と、横着をしはじめます。
普通の入れ歯なら、最初から味がわからなくなってしまいます。
入れ歯はやっぱり不自由だ、けれど我慢して使いこなさなければ、と自覚することができます。
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